不動産を活用した相続税対策
不動産が実際に取引される時価と、相続税を計算するの基準となる価格(相続税評価額)に大きな差があることを利用した節税方法になります。
下記で詳しく紹介していきます。
目次
- ○ 不動産の評価方法
- ・家屋(建物)の評価方法
- ・土地の評価方法
- ○ 不動産を活用した相続税対策
- ・①自宅相続による節税
- ・②アパート・マンション経営による節税
- ・③土地売却の資金を活用した、別の方法による節税
不動産の評価方法
現金や銀行預金で相続を行うよりも、不動産での相続の方が相続税の負担は小さくなります。
その理由は、例えば3000万円で購入した不動産が相続財産としては3000万円よりも小額で評価されるためです。
不動産をどのように利用しているかという点でも評価額は変わってきます。
不動産は家屋(建物)と土地に分けられ、評価の方法が異なります。
まずは評価の方法をご紹介します。
家屋(建物)の評価方法
家屋の相続税評価額は、固定資産税評価額と同額になります。
固定資産税評価額とは市区町村が不動産を評価した価格です。
家屋(建物)の固定資産評価額は3年に一度見直されますが、徐々に評価額が下がっていくのが一般的です。
土地の評価方法
土地の相続税評価方法には「路線価方式」と「倍率方式」の二種類があります。
・路線価方式
路線価とは、国税庁が公表している土地価格のことで、贈与税や相続税を計算する基礎となります。
道路(路線)ごとに価格が決められているため「路線価」と呼ばれ、その路線に面する土地の評価額は「1平方メートルあたりの価格×面積」で求められます。
なお、土地の形などで価格補正が入る場合があります。
・倍率方式
すべての道路に路線価が定められているわけではありません。
路線価が定められていない土地の評価は、固定資産税の評価額を基にして評価されます。
固定資産税評価額に一定の倍率をかけた金額により土地の評価が行われます。
倍率方式の場合は、土地ごとの形状をふまえた価格で設定されているため、価格補正などは入りません。
路線価や倍率方式での倍率は、下記の国税庁のホームページで確認できます。
不動産を活用した相続税対策
上記でご紹介したように、不動産の評価額は購入価格よりも大きく下がります。
これを活用することで、相続税の節税が可能となります。
具体的には
①自宅を相続することによる節税
②アパート・マンションを経営することによる節税
③土地売却の資金を活用した、別の方法による節税
の3つの方法が考えられます。それぞれについて詳しくご紹介していきます。
①自宅相続による節税
土地や家屋はその評価方法により、現金の相続に比べて相続財産の評価額を下げることができます。
これに加え「小規模宅地等の特例」も活用することで非常に大きなメリットを受けることができます。
「小規模宅地等の特例」とは
小規模宅地等の特例は、一定の面積までについて相続税の課税対象から減額が受けられる制度です。
土地の評価を80%下げることができる制度で、土地を相続された方のほとんどが利用を試みています。
②アパート・マンション経営による節税
不動産を活用した2つ目の相続税対策は「アパートやマンション経営をする方法」です。
賃貸に出している場合は、不動産を所有しているだけの場合よりも更に評価額が減額されます。
この仕組みを活用したものです。
・メリット
1つ目のメリットは、相続税の評価額を下げることができる点です。
土地や家屋の評価額を計算する際は、賃貸割合や借地権割合に応じて評価額が下がります。
人気のエリアにおける不動産の時価は、相続税評価額よりも高くなっていることがあり、評価額を大幅に低くできるケースもあります。
さらに、上記で紹介した「小規模宅地等の特例」を活用することもできます。
マンション・アパートを経営している場合でも「貸付事業用宅地等」に該当する宅地等について相続税評価額を50%も減額することができます。
マンション・アパートの場合は200平方メートルまでの土地について適用されます。
ただし
「事業を引き継ぎ、その後継者が相続税の申告期限までその事業を行っていること(事業承継要件)」
「その宅地等を定められた申告期限まで保有していること(保有継続要件)」
の2点を満たしている必要があるため注意が必要です。
2つ目のメリットは、借入金を有効活用できる点です。
借入金を利用することによって、自己資金より大きな投資をして大きなリターンを得るという方法があります。
借入金が相続時に残っている場合、債務の分については相続資産から控除されます。
・デメリット
1つ目のデメリットは「空室リスク」です。
空室がある状態で相続が開始されると、相続税は満室の場合よりも高くなってしまうリスクがあります。
2つ目のデメリットは「税制改正」です。
相続税法改正により、節税効果が減る可能性もあります。
節税効果が大きな方法については、税制改正により節税効果が少なくなりやすいとも言えますので、税制改正される時には注意しておきましょう。
③土地売却の資金を活用した、別の方法による節税
3つ目の不動産を活用した相続税対策は「土地売却」という方法です。
この方法は土地を売却した資金を活用して、別の節税効果がある方法を選択するというものです。
「自宅を売却し、より小規模宅地等の特例の効果が大きいところへ引越しする」
「使用していない土地を売却して、自宅や投資用マンションを購入する」
などのケースが考えられます。
・土地を売却する
土地を売却し引っ越しをすることで、より有利に相続税を節税することができます。
さらに、土地を売却した場合の税制優遇を活用することもできます。
自宅を売却した場合は、譲渡所得から最高3,000万円までの控除が受けられる特例があります。
所有期間は関係ありません。
また、10年以上所有している自宅を売却した場合であれば「軽減税率の特例」が適用され、譲渡所得にかかる税率が軽減されます。
・放置されている土地を売却する
空き家や使用していない土地を売却し、その資金を活用して相続税の節税効果のある不動産を購入することができます。
以上、不動産を活用した相続税対策はいろいろとありますので、有効に活用しましょう。
※記載の内容は2023年2月時点の税法に基づいております。